波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

歌集

菅原百合絵歌集『たましひの薄衣』 【歌集・歌書探訪】

塔2023年11月号に掲載された書評を掲載しておきます。菅原百合絵さんの第一歌集『たましひの薄衣』を取り上げました。 塔の「歌集歌書探訪」のコーナーで私が担当する書評は、今回が最後です。2年間に4回だけの出番ですが、とても楽しく書籍を読み比べ、書く…

佐藤通雅『岸辺』 【歌集・歌書探訪】

塔2023年5月号に掲載された「歌集・歌書探訪」の記事を以下にアップしておきます。今回取り上げたのは、佐藤通雅氏の『岸辺』。 この歌集で第34回斎藤茂吉短歌文学賞を受賞なさいました。おめでとうございます。

川野里子歌集『天窓紀行』 【歌集・歌書探訪】

塔には「歌集・歌書探訪」という連載があり、歌集や評論集、アンソロジーなどを取り上げて書評を掲載する内容となっています。 2年間(24か月)の連載を、6人でリレー形式で回します。なので、一人あたり半年に1回、合計で4回の執筆の機会がやってきます。 …

黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』

短歌結社・未来の選者をつとめる黒瀬氏の第四歌集。 第三歌集『蓮喰ひ人の日記』から続けて読んでみて、英国、日本の九州と居所を変えつつ、進んでいく人生の断片を描いています。 格調高い、やや硬質な雰囲気の文体でつづられるのは、日常のなかの家族の姿…

小島ゆかり『雪麻呂』

今回は小島ゆかりさんの『雪麻呂』を取り上げてみます。 シンプルで上品な表紙の歌集です。

江戸雪『空白』

江戸さんの第七歌集。 一冊全体を通じて、抑えきれない怒りや感情があふれている歌集です。

松村正直『風のおとうと』評「現実との距離、そしてまなざし」(2017)

*松村正直歌集『風のおとうと』評として、かつて「塔」誌上で発表した文章です。今さらですが・・・ブログにも公開しておきます。(3年経っている・・・3年!?) *掲載にあたって一部、表現を変えた箇所があります。

松村正直 『午前3時を過ぎて』

今回取り上げるのは松村正直氏の『午前3時を過ぎて』です。 以前とりあげた『やさしい鮫』から約8年、端正な文体がさらに深化したという印象です。 (諸事情あって、前の記事を再投稿しています・・・)

小島なお 『展開図』

今回取り上げるのは、小島なおさんの第三歌集『展開図』。 感覚の冴えた歌、注目すべき歌が多いです。

松村正直 『紫のひと』

歌集『紫のひと』レビュー。

小島ゆかり 『六六魚』

小島ゆかりさんの歌集『六六魚』の評です。

染野太朗「人魚」

最近、染野太朗さんの「人魚」を読んでいました。非常に読みごたえのある歌集で、印象深い一冊でした。 内部には暴力的な衝動を持ちながら、直接の暴力はあまり描いておらず、全体として抑制のきいた歌集になっています。 ただ同時に、「人魚」を殴るといっ…

林和清 「去年マリエンバートで」

久しぶりに歌集の評を更新しましょう。 歌集を含めて、書籍をじっくり読んでいるだけではなくて、自分なりに評を書いておくのは今の考えを整理して、後から振り返るためにも意味があると思っています。なにより、文章を書くことそのものが、やっぱり楽しい。…

大森静佳『カミーユ』

『カミーユ』は、大森静佳さんの第二歌集。赤い表紙にも迫力があります。 ふだん、歌会などで会う大森さんは、聡明なお嬢さんといった感じで、そんなに激しい感情の持ち主には見えない感じ。 その一方で作品を読んでいると、じつはとても激しくて美しい世界…

小島ゆかり『馬上』

『馬上』は小島ゆかりさんの第13歌集になります。 意外な展開や柔軟な発想が随所に見られて、 日常の歌をより豊かにしている印象がありました。

吉川宏志 『海雨』

吉川宏志氏の第三歌集。 久しぶりに読み返していて、初めて読んだころのことを思いだしました。 まだ結社に入っておらず、好きな歌人の作品を 図書館などで探しているときにこの一冊も読んだなぁ。 まだ短歌について手探り状態だったときに よくノートに書き…

大辻隆弘 『景徳鎮』

結社「未来」の選者である大辻氏の第八歌集。 (大辻氏の「辻」は点ひとつですが、代用しております) しばらく前からずっと読んでいて やっとまとまったので公開しておきます。 ■社会へのまなざし 大辻氏は数多くの時評や評論も手掛ける論者でもあります。 …

吉川宏志 『吉川宏志集』

吉川宏志さんの歌集を順次取り上げていってみましょう。 今回とりあげる『吉川宏志集』には『青蝉』と『夜光』の抄が入っています。 おもに第一歌集である『青蝉』から取り上げてみます。 (『青蝉』の蝉の文字が旧字なので代用しています。) ささやかな発…

光森裕樹 『山椒魚が飛んだ日』

光森さんの第三歌集。赤い表紙が印象的です。結婚を機に石垣島に移住した作者。今までとは違う環境での暮らしや子供の誕生が歌集全体を通して描かれています。 ■沖縄への移住 蝶つがひ郵便受けに錆をればぎぎぎと鳴らし羽ばたかせたり みづのなかで聞こえる…

光森 裕樹『うづまき管だより』

光森裕樹さんの第二歌集『うづまき管だより』を読んでみました。 2010年から2012年までの作品が収められています。この歌集は電子書籍なんですね。 ・・・実際に読んでみて、これはこれでいいかもしれないな、と思っています。 いや、紙の本好きですけどね。…

光森 裕樹 『鈴を産むひばり』

光森裕樹さんの歌集はすでに第3歌集まででています。順に取り上げてみましょう。 『鈴を産むひばり』は2010年に刊行された第一歌集。 光森さんの短歌はわりと淡白な印象があって、現実の把握が理知的だけど、美しい詩情も持っているといった印象でした。

山下 洋 『たこやき』

塔の選者の短歌にはそれぞれの持ち味がよく出ています。山下さんの短歌は、力の抜けた感じや面白さがあります。『たこやき』は第一歌集で、当時からすでにおかしみやユーモアのある歌も収められています。 最近の山下さんの短歌はこんな感じ。 なあ鳶よ埋め…

柏崎 驍二 『北窓集』

風ありて雪のおもてをとぶ雪のさりさりと妻が林檎を剥けり (*剥くで代用) 『北窓集』の巻頭におかれている一首です。「風ありて雪のおもてをとぶ雪の」が「さりさりと」を導く序詞になっています。外を舞う雪の様子から、室内で林檎を剥いている様子につな…

大井学『サンクチュアリ』

大井学さんの第一歌集を取り上げてみましょう。なかなか難しい歌集で、しばらく置いていました。 私ではうまく読めない歌もいろいろあるので、読みのうまい人の意見を聞いてみたかったな。 大井さんの短歌では、現代の生活をとても冷めた視点で切り取ってく…

吉野 裕之 『砂丘の魚』

今回は『砂丘の魚』を取り上げてみましょう。平易な語彙でかかれているのに、なんとなくつかみどころのない世界が広がっています。 あまり具体的なことに焦点を絞らずに、むしろ広がりがあるのが特徴かな、と思いつつ読んでいきました。 ■目の前の光景とかす…

紀野 恵 『La Vacanza』

幻想的で美しい雰囲気を持つ紀野恵さんの短歌の世界はとても惹かれます。 『La Vacanza』は表紙をひらくと、トランクのイラストがあります。歌集タイトルから察することができるように休暇をイメージした世界が広がっています。 単に違うエリアや国に行くの…

永田淳 『湖をさがす』

今回は短歌日記2011でもある『湖をさがす』を取り上げてみましょう。前年の2010年に母親である河野裕子さんがなくなっているので随所に河野さんを回想する歌が見られます。

大辻隆弘 『大辻隆弘集』

今回は大辻隆弘氏の初期歌集をまとめた『大辻隆弘集』を取り上げましょう。 ■植物とそこから広がるイメージ あぢさゐにさびしき紺をそそぎゐる直立の雨、そのかぐはしさ ゆふがほは寂しき白をほどきゐつ夕闇緊むるそのひとところ *寂しき=しづけき 幹つた…

横山 未来子 『午後の蝶』

今回は『午後の蝶』を取り上げてみます。 ふらんす堂の短歌日記2014をまとめた本です。装丁やサイズがかわいくて、このシリーズは大好きです。 ■小さなものへの視点 わが影のかぶされるとき三匹の冬の金魚のとろりと浮き来 愛づるのみにてつかはぬ硯あるとい…

松村正直 『駅へ』

『駅へ』は、松村正直氏の第一歌集です。 だいぶ前の歌集で、今更読む機会があると思っていなかったので、今回きちんと読めてとても嬉しかった。 最近の松村さんの歌風を結社誌や短歌総合誌で知っているので、初期の歌風を見ていると不思議な気もします。(…