波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年をふりかえる

2021年をふりかえってみましょう。コロナ禍の状況での暮らしが長くなり、マスクや消毒のある生活がすっかり日常になってしまいましたね。今のところ、私や家族はなんとか健康に暮らせていて、ありがたいことです。 今年をふりかえるとき、私にとってとても大…

黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』

短歌結社・未来の選者をつとめる黒瀬氏の第四歌集。 第三歌集『蓮喰ひ人の日記』から続けて読んでみて、英国、日本の九州と居所を変えつつ、進んでいく人生の断片を描いています。 格調高い、やや硬質な雰囲気の文体でつづられるのは、日常のなかの家族の姿…

『COCOON』21号

コスモス短歌会の同人誌「コクーン21号」からいくつか紹介します。ご紹介が少し遅くなって申し訳ないです。

一首評「向日葵」

向日葵をきみは愛(を)しめり向日葵の種子くろぐろとしまりゆく頃ぞ 坪野哲久「冬のきざし」『桜』 「向日葵」を愛した君とは、歌誌「鍛冶」の若手として期待されていた青江龍樹。 残念ながら戦争への召集がかかり、哲久とは会うことも叶わぬまま戦場へ赴く…

小島ゆかり『雪麻呂』

今回は小島ゆかりさんの『雪麻呂』を取り上げてみます。 シンプルで上品な表紙の歌集です。

一首評「灯す」

〆鯖のひかり純米酒のひかりわが暗がりをひととき灯す 田村元『昼の月』「梅の木」P77 自分の中の暗がりを一時的とはいえ、灯してくれるものが、人それぞれあるでしょう。 『昼の月』では圧倒的に、居酒屋や家で飲むときの酒や料理が、主体にとっての灯して…

一首評「紋」

みづからのからだに刻む紋ありてななほしてんたうの昏き夏 「沼」『ナラティブ』P205 梶原さい子 てんとう虫の模様は水玉みたいで、可愛らしいイメージだと思っています。 てんとう虫に生まれた以上、その模様を背負って生きていくことになるのですが・・・…

『COCOON』20号

ついに20号を迎えたコクーン。120頁超えで、大変読み応えのある仕上がりになっています。 できるだけいろんな歌を紹介したいと思います。

一首評「肉体」

片脚のない鳩のいた野草園 肉体という勇気を思う 小島なお 「セロテープ透ける向こう」『展開図』P120 無残な姿を晒しながら生きていく鳩。どこかが欠けたままでも生きていく。 まだ生きていくことができる「肉体」が持つ、どうにもできない外見の迫力を思わ…

一首評「踏切」

拒みしか拒まれたるか夏の夜の踏切が遠く鳴りゐたりけり 真中朋久「リコリスの鉢」『エフライムの岸』P96

一首評「無知」

桜吹雪 つよい怒りを脱ぎ捨ててどの無知よりもつややかでいる 工藤玲音「ほそながい」『水中で口笛』 工藤玲音さんの第一歌集から。言葉のもつ弾力を感じる歌が印象に残りました。 この歌なら、下句の「どの無知よりもつややかでいる」。 「無知」は本来、悪…

『COCOON』19号

同人誌「cocoon」19号のレビュー。

松村正直評論集『短歌は記憶する』

『短歌は記憶する』のレビュー。

塔2021年1月号 2

塔に掲載された時評とか書評などの感想を、ときどき書いていってみようかな・・・と思います。 1月号は、誌面時評(2ヶ月前の塔の企画や内容を振り返る評)の担当者が変わるタイミング。2021年1月号からは浅野大輝さん。適任だな、と思います。

一首評「芯」

知りたいと思わなければ過ぎてゆく 林檎の芯のようなこの冬 小島なお「心の領地」『展開図』P109 冬にかかる、林檎の芯の比喩は奇妙な感じ。林檎の「芯」なので、周りを削り取られた残骸みたいなイメージが浮かびます。 でも、心もとない状態を感じ取り、何…

『COCOON』18号 2

『COCOON』18号に掲載されている時評について、少しだけ書いておきます。

『COCOON』18号

コスモスの結社内結社・コクーンの同人誌は創刊号から読んでいますが、メンバーも増えてどんどんボリュームが増しています。 コクーン18号を読み終えたので、全体の感想をアップしておきます。 全ての作品に触れることはできませんが、コクーンの雰囲気を感…

塔2021年1月号 1

塔2021年1月号が届きました。 すこし考えたことを書いておきます。