波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2016年11月号から 4

塔2016年11月号の作品2・花山多佳子選歌欄から。 梅ゼリーの梅に手つけず子供らは草履引っ掛け虫捕りに行く 矢澤 麻子 P99 夏休みの子供たちの様子を詠んだ歌が詠草のなかにありました。「梅に手つけず」という描写で食べ物の好みだけでなく、なんとなく性格…

塔2016年11月号から 3

塔2016年11月号の作品1・池本一郎選歌欄から。 ボートにも乗つたねカメラ忘れたね百年生きたといふやうに言ふ 大塚 洋子 P87 ゆったりした雰囲気がとても魅力的な一首です。遠い昔のデートを懐かしむような言い方だと思いました。「乗つたね」「忘れたね」と…

塔2016年11月号から 2

塔2016年11月号の作品1・永田和宏選歌欄から。数字はページ数です。 お互いの屋根裏部屋を少しずつ見せ合うように手紙を交わす 白水 麻衣 69 いままさに親しくなりつつある人でしょう。だんだんとお互いの内面を見せていく様子を「屋根裏部屋を少しずつ見せ…

塔2016年11月号から 1

塔を読みつつ、いいなと思った歌には○をつけていきます。(ダメだろ、って思った歌には×つけていきます) 合評が終わった後なんで塔のなかのいいな、と思う歌をどうしようかな、と思っています。試みに欄ごとに印象に残った歌を取り出していってみましょう。…

一首評 「蝶」

靴紐を結ぶすなわち今日のわが足を見つめる蝶を創れり 大井 学 「総譜」『サンクチュアリ』 靴紐を結ぶ、という何気ない行為のなかにささやかな美しさを見出した一首。 「すなわち」という接続詞が面白く、ちょっと硬い印象の語を挟むことで下の句の「蝶」と…

一首評 「麺麭」

描かれし教会の空に白雲は割きたる麺麭のごとくかがやく 山下 泉 「塔2016年10月号」 一枚の絵を眺めているときなんだろう、と思います。ぽっかり浮かんでいる白い雲が麺麭の断面のよう、という把握は素朴ですが「かがやく」という動詞でいきいきとした表現…

塔10月号の感想 その2

塔10月号で連載50回になる「中東通信」が終了しました。 中東在住の千種さんによるエッセイと短歌の連載でとても興味深い内容でした。 屋台のスイカが大きくて甘いこととか、床屋のおじさんとの会話とかちょっとした日常の断片から見えてくる景色がとても好…

塔10月号の感想

久しぶりに塔の感想をあげておきましょう。 って10月号は2年に一度の「10代20代特集」・・・ 私が塔に入って2年経ったのね^_^; うーん、早い。 今回は合評をやっていて注目した方の短歌を取り上げてみましょう。 図書室の図鑑に眠る青い蝶狭い世界の中を生き…

塔の合評を終えて考えたこと

今年の7月から12月号まで、塔誌上の合評に参加していました。(実際に批評を書く範囲は5月号から10月号まで)塔に載っている作品をいくつか取り上げて、二者間で批評していくというスタイルで執筆しました。 まずは半年間、なんとか終わったぞ、っていう気分…

一首評 「目盛」

もうそろそろ秋を測りにくるだらう腹に目盛のあるオニヤンマ 小島 ゆかり 『純白光』 急に寒くなってきました。秋が一気に進んでいる感じです。この歌が詠まれたのは9月上旬くらい。秋になると飛んでいるトンボ、たしかにオニヤンマには見事な縞がありますが…