波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「白木蓮」

しどけなく白木蓮の咲いてゐる春のゆふぐれはくるしくてならぬ

 真中朋久「相川」『重力』P87

木蓮はきれいですが、だんだんと花びらが広がって、ちょっとだらしなくなってきた頃だと思います。時間は春の夕方。道を歩いていて、白木蓮が咲いているのを見たのでしょう。

 

気になるのは「くるしくてならぬ」。なぜ苦しいのか。しかも苦しくてならないのか。ちょっと切羽詰まったような、息苦しいような…。

 

自分の中になにかが溜まっていて、それを出す術や場所がないような、そんな苦しさかもしれません。

 

鬱屈した感情をどうすればいいのか。思うようにはならない現実をどう詠むのか。たまに読み返し、考えてしまう。私にとって『重力』はそういう歌集です。

 

今日で3月が終わります。いろいろとバタバタしている間に、もう春になってしまいました。