波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「心」

積雲の量感持てる一車輛都心の心を離れゆきたり

 *都心=としん 心=しん

小池純代『雅族』「勤めの歌」P50

積雲は、こんもりしたフォルムがかわいい、シュークリームみたいな雲です。そんなふっくらした雲みたいな量感の一車輌が、都心から発っていった。

 

面白いのは「都心の心を」離れていった、という点です。単なる都心ではなくて、なぜ「都心の心を」なのか。

 

人や物が集中している都心。その賑やかな、あるいは騒々しい都市の中心からはなれていく車輌。

 

窮屈とも思える場所から離れていくことに少し解放される感じがあるのかな、と思います。

 

離れていくからいいのであって、都心に向かう車輌だと、全く違った雰囲気の歌になるはずです。