波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2017年10月号 2

二人きりで生きてきたとでもいふやうに父と母ゐて墓買ひしを言ふ 小林 真代 P24 「二人きりで生きてきた」ということはないはずだけど、 でもそのような雰囲気でいる両親。 子にあたる主体にしてみたら寂しいし、奇妙な感じだろう。 「墓買ひしを言ふ」は年…

塔2017年10月号 1

塔10月号には興味深い評論が載っていました。 大岡信の書籍について3人の評者が書いていました。 私が特に興味を持ったのは沼尻つた子さんによる 『うたげと孤心』に関する文章でした。 ちょっと読んでみたくなりますね。 では月集から。 死者が手を洗えるご…

一首評 「鳥」

枝から枝へたぐるしぐさで生き延びてきみのてのひらを鳥と間違う 野口 あや子 『眠れる海』 今までの人生がとても危ういバランスに成り立っていたのだろうと思う。 「枝から枝へたぐるしぐさで」なんとか生きてきた その先に見えてきた「きみのてのひら」。 …

ぱらぷりゅい

「傘」という意味を持つ同人誌。 関西の女性たちが12人集まって発行しています。 (1回きりで終了らしいので、ちょっともったいない感じはしますが) 各人の12首の短歌が初めに収録されています。 この眉を蔑するもまた愛するも男だということ夜の紫陽花 江…

塔2017年9月号 5

やっと終わるよー。 なんか9月号は手間取った。 めずらしく君が怒鳴った夜だった私の中の水を揺らして 魚谷 真梨子 P154 夫か恋人か、ケンカして相手に怒鳴られたのだろう。 ふだんはめったに怒らない性格の人なのだろうから 怒鳴られたときのショックはかな…

塔2017年9月号 4

・・・・・・もう塔10月号がきました。 早いなぁ。って仕事ぶりがすごいです。 緩斜面下らせて背中見守りき自転車練習のあの春の日は 垣野 俊一郎 P104 前後に採用されている歌から、 息子が自動車免許を取得したことが分かります。 その歌の間におかれてい…

塔2017年9月号 3

加湿器の音を雨かと間違ひぬやさしき雨を待ちてゐるかも 潔 ゆみこ P59 加湿器の音が雨に聞こえてしまったのは、 主体の雨を待つ気持ちからくるのだろう。 静寂な中に聞こえる雨を思わせる音が しんみりした雰囲気を出しています。 ただ、このままだとすこし…