波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評「錆」

軋みつつひらいた傘の骨の錆 大抵のかなしみは既出だが 沼尻つた子「From Dusk Till Dawn」『ウォータープルーフ』P180 けっこう使い込んだ傘なのか、傘の骨に錆が発生している。 あまり気にしていなかったかもしれないが、ひらくときに傘が軋むから気づく。…

一首評「果実」

雨あがりの果実のごとく試料容器を籠に集めて帰り来にけり *試料容器=ポリビン 真中朋久『雨裂』「pH3・6」 現代短歌文庫P22 仕事で使用した「試料容器(ポリビン)」を集めて持って帰ってきた、というシンプルな内容の歌ですが「雨あがりの果実のごとく…

一首評「向こう」

雨降れば雨の向こうという場所が生まれるようにひとと出会えり 小島なお 『展開図』「4✕10」P142 今年は少し早い梅雨入り。出かけるには面倒なところもありますが、雨の日の静かな雰囲気はわりと好きです。 「雨降れば雨の向こうという場所」ができる。雨が…