波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評「飛ぶ」

羽ばたきに息継ぎはあり飛ぶという鳥の驚きかたを愛する 吉澤ゆう子『緑を揺らす』「光る墓光らぬ墓」P49 鳥の羽ばたきは一定の動きではなく、動かし方には緩急があります。動きがゆっくりになったときを「息継ぎ」としているのでしょう。 私も鳥の動きを見…

一首評「夕雲」

係恋に似たるこころよ夕雲は見つつあゆめば白くなりゆく *係恋=けいれん *夕雲=ゆふぐも 佐藤佐太郎『帰潮』現代短歌全集第11巻 P361 「係恋」は、「ふかく思いをかけて恋い慕うこと」。そんな心情に似た気持ちを抱えて夕暮れの時間帯を歩いている。 夕…

一首評「花びら」

冬の窓のひかり集めてひもときぬ借りて来し本のなかに花びら 真中朋久「雲頂」『雨裂』P53 静寂で美しい一首。借りてきた本を窓辺で開いた時に、目に入ってきた小さな花びら。 「ひかり集めて」で、あたたかな窓辺という場所がしっかり立ち上がります。 花び…