波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

塔2021年1月号 2

塔に掲載された時評とか書評などの感想を、ときどき書いていってみようかな・・・と思います。 1月号は、誌面時評(2ヶ月前の塔の企画や内容を振り返る評)の担当者が変わるタイミング。2021年1月号からは浅野大輝さん。適任だな、と思います。

一首評「芯」

知りたいと思わなければ過ぎてゆく 林檎の芯のようなこの冬 小島なお「心の領地」『展開図』P109 冬にかかる、林檎の芯の比喩は奇妙な感じ。林檎の「芯」なので、周りを削り取られた残骸みたいなイメージが浮かびます。 でも、心もとない状態を感じ取り、何…

『COCOON』18号 2

『COCOON』18号に掲載されている時評について、少しだけ書いておきます。

『COCOON』18号

コスモスの結社内結社・コクーンの同人誌は創刊号から読んでいますが、メンバーも増えてどんどんボリュームが増しています。 コクーン18号を読み終えたので、全体の感想をアップしておきます。 全ての作品に触れることはできませんが、コクーンの雰囲気を感…

塔2021年1月号 1

塔2021年1月号が届きました。 すこし考えたことを書いておきます。

2020年を振り返ってみる

今年最後の投稿になります。2020年は誰にとっても、驚きやショックの連続みたいな1年になってしまいましたね。 私もなんとか無事に年末を迎えることができて、ホッとしています。 年のはじめに転居して、新しい生活が始まったことがプライベートでは大きかっ…

江戸雪『空白』

江戸さんの第七歌集。 一冊全体を通じて、抑えきれない怒りや感情があふれている歌集です。

松村正直『風のおとうと』評「現実との距離、そしてまなざし」(2017)

*松村正直歌集『風のおとうと』評として、かつて「塔」誌上で発表した文章です。今さらですが・・・ブログにも公開しておきます。(3年経っている・・・3年!?) *掲載にあたって一部、表現を変えた箇所があります。

松村正直 『午前3時を過ぎて』

今回取り上げるのは松村正直氏の『午前3時を過ぎて』です。 以前とりあげた『やさしい鮫』から約8年、端正な文体がさらに深化したという印象です。 (諸事情あって、前の記事を再投稿しています・・・)

一首評「戦士」

ぼろぼろに朽ちたり燃えあがつたりする薔薇がいとしき戦士であつた 木下こう「あはくてあかるい」『体温と雨』P127 『体温と雨』に収録されている歌は全体的に、まさに淡い感じの歌が多いです。 そのなかでポイントになっているのは、名詞の使いかたではない…

一首評「街」

だらしなく降る雪たちにマフラーを犯されながら街が好きです 阿波野巧也「ワールドイズファイン」『ビギナーズラック』P9 街に関する歌が多い歌集でした。 全体的な語り口はとてもライトですが、ときどき、いい意味で引っかかる表現が入っています。 取り上…

一首評「こころ」

近づけば近づくほどに見えざらむこころといふは十月の雨 本田一弘 『あらがね』「虎」 普通は距離をつめて近づくほどによく見えるはずなのだけど、近づくほどかえって見えないようになるだろう、とは逆説的だし、皮肉。 単なる物体なら、近寄るほどにはっき…

一首評「髪」

蜂の音ヘ振り向くあなたの長い髪、ひろがる、かるい畏怖みせながら 千種創一 「連絡船は十時」『千夜曳獏』P54 近くで蜂の羽音がしたから、思わず振り向いてしまった相手を見ていて、その長い髪が広がる様に一瞬の美しさを見いだしているのでしょう。 実際に…

一首評「箱」

秋の雨あがった空は箱のよう林檎が知らず知らず裂けゆく 江戸雪「吃音」『空白』P30 10月にはたくさん歌集を読もうと思っていて、そのなかで読み終えた一冊が『空白』です。 秋の空は夏の空より、ずっと高く見えます。秋の雨が上がった後には、箱のようだと…

一首評「白」

白雲をおし上げてゐる白雲のかがやける白海をはなれつ 竹山広 「東京のこゑ」『一脚の椅子』 季節は夏かな…と思っています。海上に浮かんでいる雲にも位置の上下があって、おしあげていた下の雲が、海を離れたばかり。といった景色を想像します。 白雲のボリ…

一首評「風」

彼岸花あかく此岸に咲きゆくを風とは日々のほそき橋梁 内山晶太 「反芻」 『窓、その他』 ちょうどお彼岸の季節ですね。彼岸花の強い赤さは、私はけっこう好き。 この歌も彼岸のころの景ですが、彼岸は時期であると同時に、場所をも指しているのではないか、…

一首評「領地」

体育館の窓に雪呼ぶ雲ながれ視界は多く心の領地 P108 小島なお 「心の領地」『展開図』 体育館の窓越しに、空に重そうな雲が見えてきたシーン。雪が降る予感を感じつつ、まだその瞬間は来ない。 上の句から下の句への展開がとても難しい一首でした。 眼で見…

小島なお 『展開図』

今回取り上げるのは、小島なおさんの第三歌集『展開図』。 感覚の冴えた歌、注目すべき歌が多いです。

一首評「鏡」

三面に淡い雨降る三面鏡傘さすひとを映すことなし 小島なお「雨脚」『展開図』P57 三面鏡はたしか、実家のドレッサーで見たことがあったな・・・・。お化粧をする際に、三方向から確認できるので、色ムラがないか、仕上がりがきれいか、しっかり確認できます…

塔5月号を読みつつ考えたこと。

最近考えたこと。

尾崎左永子『鎌倉もだぁん』から

ここしばらく、尾崎左永子さんの『鎌倉もだぁん』を読んでいました。 以前、三月書房で買った一冊です。(三月書房ももう一度くらい、行きたかったなぁ・・) 『鎌倉もだぁん』は、鎌倉での暮らしのなかで詠まれた作品群です。 春夏秋冬の鎌倉の風景や色や匂…

一首評「森」

やはらかな森の吐息に濡れながらほたるは一生ひかりつづける 杉本なお「ふくろふの森」

3/28 Zoom歌会に参加してみました。

落ち着かない日々が続きますね。新型コロナウイルスの影響で、各種イベントが中止や延期になり、気落ちしている方も多いでしょう。 歌会も軒並み中止となっており、「参加したいのに残念」という声も多いはずです。 3月28日にZoomを使って、オンラインの歌会…

一首評「正解」

るるるると巻き取るパスタ 正解を知っていながらいつも間違う 松村正直 『紫のひと』「正解」P90

一首評 「自転車」

遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた 東 直子「ハルノシモン」『青卵』 P183

一首評「ナイフ」

手紙たくさん書くさびしさを愛と呼ぶつがいのナイフ水に沈めて 東 直子「つがいのナイフ」『青卵』P20

一首評「漣」

漣はむかし清音なりしとかささなみささなみ夕陽を洗ふ 伊沢玲 『雲のすごろく』「ケトル」P73

一首評「感情」

感情の錆びゆく速度ねこじゃらしの頭に触れて留めておこう 小島なお「十円」 COCOON14号

一首評 「頬」

人の生に降る雨粒のかくまでに閑けく人の頬に走れる *生=よ 閑けく=しづけく 岡井隆 『宮殿』 P 157

一首評 「発見」

自暴自棄になりてようやくかがやけるこころなど春の発見として 内山晶太 『窓、その他』