波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「飛ぶ」

羽ばたきに息継ぎはあり飛ぶという鳥の驚きかたを愛する

吉澤ゆう子『緑を揺らす』「光る墓光らぬ墓」P49

鳥の羽ばたきは一定の動きではなく、動かし方には緩急があります。動きがゆっくりになったときを「息継ぎ」としているのでしょう。

 

私も鳥の動きを見たことはありますが、鳥の羽ばたきに「息継ぎはあり」という把握に少し驚きました。

 

そして、飛ぶこと自体が「鳥の驚きかた」というのも面白い。下の句まで読むと、何かにびっくりして鳥が舞い上がった瞬間を詠んでいるのかもしれない、と思いました。

 

主体は、そんな鳥を、鳥の飛ぶさまを愛する、と詠みます。

 

短時間の動きのはずですが、見方や把握に面白みがあり、印象に残った歌です。

 

『緑を揺らす』は静かな歌集で、仰々しいところはありません。こちらもよく耳を傾けないと、繊細な声や音を聞き落としそうな一冊という感じがしました。