波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「煙草」

ことごとく煙草に巻いて吸ふあそびまづは真夏の森ふたつほど

小池純代 「青煙抄」『雅族』P13

やっと暑さがましになってきました。真夏はほんと、辛かった。

 

わたしは煙草って全く吸ったことないけど。子供だったむかーし、大人のアイテムだなー(とりわけ大人の男性に似合う)、とぼんやり憧れたことはあります。

 

さて、この歌では煙草に何かを巻いて、吸う。いわゆる手巻き煙草

 

あくまでも遊びにすぎない、というあたりに余裕を感じます。巻くのが「真夏の森ふたつほど」であることがこの歌の面白さ。スケールが大きく「ほど」というざっくりした把握にも少し驚きます。

 

人間よりもっと大きな存在(たとえば神さま)が行っている遊びかな、という気もします。

 

いろんなものをことごとく巻いていくらしいので「真夏の森ふたつほど」は単なる手始めなんでしょうけど、生命の塊りみたいな真夏の森を軽々とつまんで煙草に巻いてしまうあたり、もっと大きなエネルギーを感じるのです。