波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

柏崎 驍二 『北窓集』

風ありて雪のおもてをとぶ雪のさりさりと妻が林檎を剥けり (*剥くで代用) 『北窓集』の巻頭におかれている一首です。「風ありて雪のおもてをとぶ雪の」が「さりさりと」を導く序詞になっています。外を舞う雪の様子から、室内で林檎を剥いている様子につな…

大井学『サンクチュアリ』

大井学さんの第一歌集を取り上げてみましょう。なかなか難しい歌集で、しばらく置いていました。 私ではうまく読めない歌もいろいろあるので、読みのうまい人の意見を聞いてみたかったな。 大井さんの短歌では、現代の生活をとても冷めた視点で切り取ってく…

大森 静佳 「サルヒ」

先日、なんとか手に入れた大森さんの「サルヒ」から少しだけ。今年の夏にモンゴルに行かれたときの写真と短歌で構成されています。モンゴル語で「風」を意味する「サルヒ」には大草原の景色が広がっています。 唇もとのオカリナにゆびを集めつつわたしは誰か…

『COCOON』 創刊号

今回はコスモスの結社内同人誌である『COCOON』を取り上げます。

第8回クロストーク短歌

第8回クロストーク短歌に行ってきたので、ちょっと感想をあげておきます。あくまで私の感想なんで。いろいろ考えていたら長くなった・・・。 今回は「若い世代の歌をどう読むか」ということでなにかと「わからん」「淡い」とか言われることがある20代、30代…

一首評 「素足」

大いなる薔薇と変はりし靴店に素足のままのきみをさがせり 水原 紫苑 「湖心」『客人』 靴店に素足、という点が意外な感じで気になりました。新しい靴を探すときに、いちど素足(少なくとも靴は脱ぐ)になることを踏まえて詠まれているのではないかな、と思…

塔2016年11月号から 11

11月号の紹介、終わったなーとか思っていたら月集をとばしていますね。いや、別にわざとじゃなくて思いつきで新樹集から始めた都合、次のページに進んでいっただけです・・・・。 ネクタイをまた締めてゆく秋となり小鮎のような銀で挟めり 吉川 宏志 P2 たし…

塔2016年11月号から 10

塔2016年11月号の若葉集・山下洋選歌欄から。 遠いところは遠くにあったあの頃の茶の間のテレビに奥行きがあり 竹田伊波礼 P195 「茶の間のテレビ」はもうレトロなアイテムになりましたね。今から考えると不格好なほどの奥行きがありました。当時よりも情報…

塔2016年11月号から 9

塔2016年11月号の作品2・三井修選歌欄から。 むらさきの淡き桔梗の花びらにむらさきの濃き筋目あり、雨 清水 良郎 P172 一輪の桔梗のなかの紫の濃淡に着目している観察がとてもいい。結句の「、雨」も面白く桔梗の花びらを雨滴がつたっていく様子が浮かびま…

塔2016年11月号から 8

塔2016年11月号の作品2・小林幸子選歌欄から。 記憶とはむしろ細部のことばかりくびすじ蒼きひとでありたり 中田 明子 P157 毎回巧いのが中田さん。人間はどんどん忘れていく。記憶はまさに断片として残っていく。「くびすじ蒼きひと」はなんだか儚い印象を…

塔2016年11月号から 7

塔2016年11月号の作品2・永田淳選歌欄から。 塔という結社にいます、タワーの。と言いつつタワーを形づくる手 逢坂 みずき P145 なんだかおかしかった一首。所属している短歌結社のことを説明するのにどう説明しているのか、生き生きと描写しているのがいい…

塔2016年11月号から 6

塔2016年11月号の作品2・江戸雪選歌欄から。 モノクロの人ら行き交う五番線ホームの朱きポスト黙せり 岡村 圭子 P129 「モノクロの人ら」はたぶんスーツなどダークトーンの服装なんだろう。人がモノクロであるのに対して、ポストの色がやけに鮮やかで、物体…

塔2016年11月号から 5

塔2016年11月号の作品2・栗木京子選歌欄から。 きみが手にきつと触れしと図書館の茂吉の棚に今日も来てをり 広瀬 明子 P114 慕っているひとがおそらく読んだだろう本がある棚の前にまた来ている、一途なシーンだなと思います。ただ「きみが手にきつと触れし…