波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評「白木蓮」

しどけなく白木蓮の咲いてゐる春のゆふぐれはくるしくてならぬ 真中朋久「相川」『重力』P87 白木蓮はきれいですが、だんだんと花びらが広がって、ちょっとだらしなくなってきた頃だと思います。時間は春の夕方。道を歩いていて、白木蓮が咲いているのを見た…

一首評「首」

青空に首差し入れて咲いている木蓮の白さを言えばよかった 三井修「木沓」『海図』P73 青空に向かって咲いている白い木蓮。とてもきれいな景色です。「首差し入れて」が気になる表現で、わりと大きな花である木蓮が、なんとなく鳥の頭部のように思えます。 …

一首評「銃」

使はなかつた銃をかへしにゆくやうな雨の日木蓮の下をくぐりて 鈴木加成太「千年の雨 二〇二〇年~二〇二二年」『うすがみの銀河』P109 そろそろ木蓮の季節です。とても好きな花です。 つかわなかった/じゅうをかえしに/いくような/あめのひもくれんの/…

一首評「葦」

葦原の葦に雨ふる夕暮れをうつくしいと思ふだらうよごれても 澤村斉美『galley』「葦に雨ふる」P162 「葦原」「葦」「雨」のア音、「夕暮れ」「うつくしい」のウ音が、なめらかなつながりを生んでいます。 「葦原の葦に雨ふる夕暮れ」たしかにきれいな光景だ…

一首評「耳」

三耳壺の三つぶの耳冷ゆ亡き人の声聞きゐるはいづれの耳か *三耳壺=さんじこ 栗木京子『新しき過去』「チキンラーメン」P32 三耳壺は、細長いひも状の飾りが付いた壺。写真などで見ると、たしかに耳みたいな小さな飾りが三つ、ついています。 下の句では壺…