波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評「言葉」

わたしには言葉がある、と思わねば踏めない橋が秋にはあった 大森静佳「アナスタシア」『ヘクタール』P42 鮮烈な言葉の世界を持っているのが、大森静佳作品の特徴。「橋が秋にはあった」などア音によるリズムも心地よい。 「わたしには言葉がある」とは、ま…

一首評「蜜」

花の蜜よりも木の蜜しづかにて眠れぬ夜の紅茶に垂らす 栗木京子『新しき過去』「小舟のごとし」P32 心配事でもあるのか、眠れない夜。たまにありますよね。温かい飲み物でも欲しくなって、紅茶を淹れたのでしょう。 紅茶に垂らすのは、蜂蜜。蜂蜜にもいろい…

一首評「喉」

海峡を女の喉とおもうとき吹き送られて小鳥ら渡る 杉﨑恒夫「幻想空間」『パン屋のパンセ』P72 女性の喉を思うとき男性のそれとは違って、なめらかなほっそりした線を思い浮かべます。 海峡という陸に挟まれた狭い海洋と、ほっそりした女性の喉。 比喩として…