波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「蜜」

花の蜜よりも木の蜜しづかにて眠れぬ夜の紅茶に垂らす

栗木京子『新しき過去』「小舟のごとし」P32

心配事でもあるのか、眠れない夜。たまにありますよね。温かい飲み物でも欲しくなって、紅茶を淹れたのでしょう。

 

紅茶に垂らすのは、蜂蜜。蜂蜜にもいろいろ種類があって、この歌では「花の蜜」と「木の蜜」の比較が面白い。

 

花の蜜というと、レンゲやラベンダーの花の蜜。木の蜜というと、ニセアカシア(ハリエンジュ)やオレンジ、リンゴの木からの採取かな。木に咲くタイプの花からの採取というか。

 

「花の蜜よりも木の蜜しづかにて」落ち着かない夜なので、より静かな方を選んでいるようです。

 

「木の蜜」のほうが穏やかで効果がありそう。ざわついた気持ちを安定させる術としての飲みもの。少量加える蜂蜜の選択にも、なんだか説得力があります。