波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「喉」

海峡を女の喉とおもうとき吹き送られて小鳥ら渡る

 杉﨑恒夫「幻想空間」『パン屋のパンセ』P72

 

女性の喉を思うとき男性のそれとは違って、なめらかなほっそりした線を思い浮かべます。

 

海峡という陸に挟まれた狭い海洋と、ほっそりした女性の喉。

 

比喩として、ああ、なるほどね、と思って読んでいると続くのは「吹き送られて小鳥ら渡る」という小さな鳥たちの移動。

 

もちろん、風に吹き送られて、ということでしょうけど喉という単語があるため、喉のなかを移動する空気の流れ、呼吸の息も想像します。

 

吸ったり吐いたり、息にも方向があります。風の流れのなかを飛んでいく小鳥らと、呼吸のなかの空気の流れを重ねつつもう一度、海峡と喉の相似について考えます。