波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「山茶花」

息とめる遊びもいつか遠くなり山茶花はあかい落下の途中

小島なお 『展開図』「公式」P104

山茶花もそろそろ、おわり。じきに春ですね。

 

それにしても、山茶花の赤い花びらは道でよく目立ちます。

 

「息とめる遊び」は私はやった覚えが無いんですが、呼吸という生き死にと関連することまで遊びにしていた逞しさというか不遜さというか、子供時代にはそんな面があります。

 

子供の頃に呼吸を止める遊びをしていたけど、大人になると、そんな真似はもうしない。

 

この歌で惹かれるのは「山茶花はあかい落下の途中」という表現。

 

山茶花の場合、椿とは違って、花びらがバラバラになって、散っていきます。

 

ひとつの花が花びらを失っていく様というより、一枚の花びらが地に向かって落ちていく最中かと思いました。ごく短い時間のなかの花びらの動きをゆっくりゆっくり、追っていく感じ。

 

時間の感覚として、遠い子供時代の記憶と、今、花びらが落ちていく短い時間とが同時に存在していて、その差が印象に残るのです。