ダリア畑でダリア焼き来し弟とすれちがうとき火の匂うなり
佐藤通雅「夏逝かんとす」『薄明の谷』P22
佐藤通雅さんの第一歌集から。
ダリア畑、という場からしてすこし異質な空間という気がします。ダリアの花は花びらがたっぷりあって、カラフル。丸いフォルムがとてもかわいくて見栄えもする。
畑にはダリアが一面にあったはずですが、その畑のダリアを弟が焼いてきた。圧倒的な火の力。あとには黒っぽい大地がむき出しになっていたはずです。
自分と弟がすれちがうときに、弟の身体から火の匂いがする。火や煙の匂いがするのは当然のことだけれど、大きな火を扱ってきた弟の姿に少し怖いものを感じました。
すれちがうとき、というのはお互いの身体が最も近づくとき。一面のダリアを焼いて消滅させてきた弟。兄弟とはいえ、異質なものを含んでいて、その差異がひどく自身のなかで気になってしまう……。
今年は佐藤通雅さんの歌集や評論集をまとめて読むことができました。特に評論はボリュームがすごくて、『岡井隆ノート』を近々、読み終わりそうです。これから私が評論を書く際に、役立てていけるといいな。