波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2021年をふりかえる

2021年をふりかえってみましょう。コロナ禍の状況での暮らしが長くなり、マスクや消毒のある生活がすっかり日常になってしまいましたね。今のところ、私や家族はなんとか健康に暮らせていて、ありがたいことです。

 

今年をふりかえるとき、私にとってとても大きいのは、読書会を定期的に開いていたことと、その内容を冊子にしてみたことです。

 

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黒瀬珂瀾『ひかりの針がうたふ』

短歌結社・未来の選者をつとめる黒瀬氏の第四歌集。

 

第三歌集『蓮喰ひ人の日記』から続けて読んでみて、英国、日本の九州と居所を変えつつ、進んでいく人生の断片を描いています。

 

格調高い、やや硬質な雰囲気の文体でつづられるのは、日常のなかの家族の姿や仕事の有様。

 

美的で愛しいものと、日常の些末で混沌とした面との両面が織り込まれています。

 

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一首評「向日葵」

 

向日葵をきみは愛(を)しめり向日葵の種子くろぐろとしまりゆく頃ぞ

 坪野哲久「冬のきざし」『桜』

 

「向日葵」を愛した君とは、歌誌「鍛冶」の若手として期待されていた青江龍樹。

 

残念ながら戦争への召集がかかり、哲久とは会うことも叶わぬまま戦場へ赴くことになった。後に中国で戦病死。

 

青江が好んで詠んでいた向日葵。夏の向日葵の堂々たる美しさと、既に枯れた花の中にみっしり並ぶ種子とは全く違う姿に見える。

 

過ぎてしまった夏、向日葵の種子の黒々とした色味、その締まり具合。出征する友人、見送る側にいる自分自身。

 

読んでいると、ふたつのイメージが混ざり合って、期待していた若い友人を案じる痛切な感情を受け取るのです。