わたしには言葉がある、と思わねば踏めない橋が秋にはあった
大森静佳「アナスタシア」『ヘクタール』P42
鮮烈な言葉の世界を持っているのが、大森静佳作品の特徴。「橋が秋にはあった」などア音によるリズムも心地よい。
「わたしには言葉がある」とは、まさに言葉を紡ぎ続けてきた時間があるから言えるのでしょう。
そしてそう思うことで、やっと踏めた橋がある。季節は秋。夏ほど日差しは強くなく、風の冷たさや木々の美しさの中かもしれない。
なにか厳しい場所に行くつもりなのか、並々ならぬ決意。「と思わねば踏めない」がポイントかな…。
仮に~~とでも思わないとやってられない、みたいな感じの、どうにか実行できる境地。
言葉は自分のなかから紡いでいくもの。他人や他人の作品がヒントや参考になることはあっても、最終的には自らのなかから引っ張り出すしかありません。
口で話す、あるいは手で綴ることで言葉を武器や道具として、そして自分を守る術として、機能させる。
強い決意が込められていて、わたしは大森作品を読んだときに、それを強度として感じているように思います。