波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「向こう」

雨降れば雨の向こうという場所が生まれるようにひとと出会えり

小島なお 『展開図』「4✕10」P142

今年は少し早い梅雨入り。出かけるには面倒なところもありますが、雨の日の静かな雰囲気はわりと好きです。

 

「雨降れば雨の向こうという場所」ができる。雨が降る土地と、降っていない土地。その時の天候で、場所の性質が分かれてしまう。

 

「ひとと出会えり」の比喩として使われることで、他者という異質なものとの出会いや関わりは、雨が降る地とそうでない向こうの場所との接点とも言えます。

 

「向こう」の景色、温度、雰囲気。異質なものと接することで自分のことが見えてきます。

 

もちろんこちらと「向こう」の違いゆえに摩擦やストレスも感じるのですが。

 

この時期、しばらく雨の歌に注目してみます。