河合育子「うがひ」『春の質量』P44
コンビニの棚にはいろんなお茶がずらっと並んでいます。今回、主体が選んだのは伊右衛門のお茶。
棚の奥まで同じ商品が並んでいるので、手前の一本を取れば当然ながら隙間ができて、次の一本がするする、と手前に滑って出てきます。そのさまを「次の伊右衛門が消す」という動詞で表現したのがおもしろい。
ペットボトル一本分の生じた空間を、同じ商品でもう一度埋めていくことで当たり前のように代替していく。
日常の中のよくあるシーンですが、描写の面白さによってああ、あのシーンをこう再現したのか、と感心する歌です。