波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2018-01-01から1年間の記事一覧

一首評 「ドア」

回転ドアのむかうに春の街あれどほんたうにそこに出るのかどうか 小島ゆかり「谷戸町」 『馬上』(現代短歌社) P54 回転ドアってなんだか不思議なアイテムで、 区切られた円筒形のなかを回っていくという あえてやや面倒な仕組みになっています。 単なる1枚…

一首評 「鳥」

切手帖のくらやみのなかのうつくしき鳥たちいつせいに発火するごとし 真中 朋久 「火光」 『火光』P100 「火光」のなかでとても印象的だった歌です。最近、読み直していて、やっぱり印象深い。 美しさと怖さが同じ作品のなかにあることがしばしば、あります…

塔2018年4月号 6

さて、塔4月号には「歌集の作り方」という特集が掲載されています。 これから歌集をまとめたい、と思っている人にはとてもいい企画ですよね。 座談会の内容は盛りだくさんで収録する歌の選択やタイトルなどの具体的な部分と、出版にあたっての気持ちなどメン…

塔2018年4月号 5

のんびりしたGWを過しています。 5月6日に東京で文学フリマがあるらしいけど 同人誌とかそのあたりの流行りがまったくわからぬ・・・。

塔2018年4月号 4

先日書いた記事のなかで次の一首を取り上げましたが・・・。 ためらいをかすか見せつつふり仰ぐあなたというひと 窓に見届く 中田 明子 P122 ためらっている様子を「見せつつ」なので、 自分ではなく他人の行動のような・・・・ ふり仰いだのは「あなた」の…

塔2018年4月号 3

ありきたりで終わっている歌と、そうでない歌の差について 最近、よく考える。 毎日、大量の情報にさらされ、番組やCM、音楽や映像、 あらゆる刺激を浴び続けて ちょっとやそっとのことでは感覚が驚かなくなっているなかで 短歌なんていう小さな詩形に何を詠…

塔2018年4月号 2

塔4月号には「歌集の作り方」という特集があって興味深いけど、 ちょっともやもやした感じも感じている。 ゆっくり読んで、時間をおいて考えてみます。

塔2018年4月号 1

4月号を読んでいて、やけに目に留まるのが猫の歌。 今回は猫を詠んだ歌の紹介が、ちょっと多めになりそうです。

一首評 「ひかり」

教室はいやおうもなく春となり壁に押したる画鋲のひかり 大辻 隆弘(辻はしんにょう一つ)「蘇枋」『景徳鎮』 教室にとって春は特別な季節。 新入生が入ってきて、また新しい年度が始まる区切りです。 教師を長年やってきた作者にとっても 新しい1年のスター…

塔2018年3月号 5

桜の散るのが早すぎる・・・。 もうすこし見ていたかったなぁ。

塔2018年3月号 4

特別作品についてはいろんな意見があるようで、 もう少し評もたくさん載せて欲しい、とは 私も前から思ってはいます。 そうはいってもページ数の関係とか仕事の分量とか いろいろあって難しいのだろう、とも思います。 またそのうち作りかけになっていた連作…

塔2018年3月号 3

特別作品といえば、2017年の年間優秀作が発表されていました。 今回は「琥珀に染まる」という連作で 優秀作に選んでいただきました。 ありがとうございました。 もともとこの連作は京都にある喫茶店・六曜社に 行ったときをイメージして編んだ連作でした。 …

塔2018年3月号 2

塔3月号の作品1から。 そういえば、特別作品欄には今回は4作品が載っています。 見やすいので、このくらいの掲載数でいいかもしれないですね。 まぁ、そのぶん選考結果が厳しくなって 掲載されない作品が増えるんですが・・・・。

塔2018年3月号 1

だんだん暖かくなってきて、ほっとしています。 桜がちらちら咲いていて、お花見のことを考えてしまう。 今年はどこの桜を見に行こうかな。 塔3月号が届きました。

吉川宏志 『海雨』

吉川宏志氏の第三歌集。 久しぶりに読み返していて、初めて読んだころのことを思いだしました。 まだ結社に入っておらず、好きな歌人の作品を 図書館などで探しているときにこの一冊も読んだなぁ。 まだ短歌について手探り状態だったときに よくノートに書き…

塔2018年2月号 5

その先に海はあるはず右へゆく道のかなたを一瞬思う 吉原 真 P159 今回の若葉集のトップにおかれていたのが吉原さんの歌でした。 どの歌も魅力的と思いつつ、どれか一首引こうと思っても はっきり決まらなかった。どうしてだろう。 「右へゆく道」の先に思い…

塔2018年2月号 4

胸に揺れる血の色のポピー一つ一つ私を見てゐる戦勝記念日 *戦勝記念日=リメンブランス・サンデー 加茂 直樹 P122 戦勝記念日の式典に出席したのでしょうか、 それとも画像か何かで見ているのでしょうか。 胸元に飾られている可憐なポピー、 でも赤い色が…

塔2018年2月号 3

やりたいと思ふことよりやりたくはないことばかり 特急通過 濱松 哲朗 P59 駅で電車を待っているシーンかな、と思います。 やりたいことよりも やりたくないことのほうが心のなかで 比重を増している。 どんよりした感じに占められていて 鬱屈した感じが主体…

塔2018年2月号 2

夜、きみはもう戻れないやり方でポテトチップスの袋をあけた 上澄 眠 P29 夜にスナック菓子の袋を開けた、という歌ですが 文字通りの意味ではなくて、なにかの比喩かもしれない。 「もう戻れないやり方で」という描写に 切羽詰まった感じがあります。 ポテト…

塔2018年2月号 1

つやつやと餡パンを積む店内が冬の夕闇にただようごとく 吉川 宏志 P4 店内にいてパンを選んでいるシーンだろうと思います。 餡パンには独特のつやがあります。 たくさん積まれた餡パンの色つやをたたえながら、 店内そのものが冬の夕闇のなかでふわふわとし…

一首評 「木」

二月の陽しろくあかるし樹皮のなか木はみずからを閉じ込めて立つ 吉川 宏志 「冠羽」 『海雨』 まだ寒い二月、とはいえ冬の終わりを 感じ始める時期でもあります。 すこしやわらいだ陽が射す二月、 樹木の立つさまを 「木はみずからを閉じ込めて」という把握…

一首評 「なのはな」

やわらかく脈打つからだここにあるすべてのものを消して なのはな ひぐらしひなつ 『きりんのうた』 「塔」の新人賞作品にけっこう苦戦していて、 気まぐれに昔好きだった歌集を持ち出してみる。 結句の「消して なのはな」がとても印象深かったし、 それは…

塔2018年1月号 5

2月になってしまった・・・・。 でもがんばったら「塔」が届いたその月のうちに 全部、評を更新できそうかな、と思う。 日ごと夜ごと容易に不穏になる胸の森に一羽の飛ばぬ小鳥を 中森 舞 P173 不安とかストレスのせいで気持ちが不安定になりがちなのかもし…

塔2018年1月号 4

川の面に刺さりて鮎を釣る影を橋にもたれて数えておりぬ 永久保 英敏 P120 鮎釣りのために来ている人たちの 「影」に注目して、しかもその数を数えているという歌です。 人そのものではなくて影への着目、 数を数えるという行為になんだかこだわりがあります…

塔2018年1月号 3

鏡台に食ってかかるごと顔寄せてわかくさの妻が紅ひいている 垣野 俊一郎 P72 とても面白い歌です。毎日のように見ている妻の仕草を いきいきと描いていて、迫力があります。 「わかくさの」は「妻」にかかる枕詞。 「鏡台に食ってかかるごと顔寄せて」とい…

塔2018年1月号 2

みんなみの島を空より撃つに似てタルトレットをフォークで壊す 朝井 さとる P28 上の句は北朝鮮によるミサイル発射をふまえて詠まれているが 下の句はささやかな日常のお茶の時間。 世の中でどれどほ驚異的な出来事や事件が起こっていても 一般の人間は、仕…

塔2018年1月号 1

「塔」の表紙は半年ごとに変わります。 今回もおしゃれで素敵。 今年もなんとか「塔」の歌をいろいろ紹介できるといいな。 曼珠沙華見なかったといえば嘘になるしかし曠野はずっと続いた *曠野=あれの 吉川 宏志 P6 「見なかったといえば嘘になる」という…

一首評 「あねもね」

抱かれず なにも抱かずねむりたり半島にあねもねの咲く夢 抱かれず=いだかれず 江戸 雪 『百合オイル』 ひとりで静かにねむる夜。 初句のあとにあえて一字空けていることで 断絶した感覚を感じます。 見ている夢の場所が 「半島」という大陸から飛び出すよう…

一首評 「間」

雨降れば雨の間に立つ花あざみ祖母の死後濃くなりしふるさと *間=ま 吉川 宏志 『海雨』 降っている雨のすじにも間があって、 その間に存在している花あざみ、という描きかたに惹かれます。 ふだんなにげなく見ている光景を あらためて言葉で描写して 定着…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 いぬ年なので、犬の歌をあれこれ考えてみました。 そのうちの一首をアップしてみます。 犬は昔、飼っていたけど もうすっかり時間が経ってしまって懐かしい記憶になってしまった。 私は今年…