波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「あねもね」

抱かれず なにも抱かずねむりたり半島にあねもねの咲く夢

抱かれず=いだかれず       江戸 雪 『百合オイル』

 

ひとりで静かにねむる夜。

初句のあとにあえて一字空けていることで

断絶した感覚を感じます。

見ている夢の場所が

「半島」という大陸から飛び出すような形の

場所であることが象徴的です。

なにか異質な場所のようで、

かと言って大陸と離れているわけでもない。

「あねもね」の字の柔らかさが

夢のぼんやりした感覚と合っています。