波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「木」

二月の陽しろくあかるし樹皮のなか木はみずからを閉じ込めて立つ 

          吉川 宏志 「冠羽」 『海雨』

 

まだ寒い二月、とはいえ冬の終わりを

感じ始める時期でもあります。

すこしやわらいだ陽が射す二月、

樹木の立つさまを

「木はみずからを閉じ込めて」という把握がとても面白い。

硬い樹皮のなかにはもっとエネルギーのある生命が

包まれているようで、なんだか気になります。

春になれば内側から新しい芽ばえを生み出してくれるはず。

覆っているものと包まれているもの、

見えている部分と見えない部分、

その差を感じ取る感覚に鋭さがあります。