回転ドアのむかうに春の街あれどほんたうにそこに出るのかどうか
回転ドアってなんだか不思議なアイテムで、
区切られた円筒形のなかを回っていくという
あえてやや面倒な仕組みになっています。
単なる1枚のガラスではなくて、
いくつかの区切りごしになっている回転ドアだから
より向こう側を遠く感じます。
ドアの向こう側って
こちらとは違う世界のような気さえします。
この歌のなかでは主体は建物のなかにいて、
いまから外に出て行こうとしているのでしょう。
硝子の向こうに見えている春の街。
でもくるっと回転ドアに沿って出て行った先は
本当にいま見えている光景のなかなのかどうか。
もっと別の世界にたどりつきそうな予感もします。
どこにたどりつくのかわらかない不安とかあいまいさは
だれでも感じたことがあるでしょう。
よくある感覚をどんな風に詠むのか、
そこに歌人の力量がはっきり出てきて、興味深い。