波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「なのはな」

やわらかく脈打つからだここにあるすべてのものを消して なのはな

           ひぐらしひなつ   『きりんのうた』 

 

「塔」の新人賞作品にけっこう苦戦していて、

気まぐれに昔好きだった歌集を持ち出してみる。

 

結句の「消して なのはな」がとても印象深かったし、

それはいまでも同じように思う。

ただそこにいたるまでの過程あってこその結句だったと

改めて読んでいて思うのです。

みずからの身体に通っている血やその脈の存在、

それでもいつかはこの生命が消える必然や

あえて消したい願望などが入り混じった果てに

一字空けの「なのはな」がくることで

鮮やかな黄色の花の生命がより鮮烈に浮かびます。

イメージの広がりのある歌を詠みたいな、と思いつつ

ずっとやってきた気がしています。