雨降れば雨の間に立つ花あざみ祖母の死後濃くなりしふるさと *間=ま
吉川 宏志 『海雨』
降っている雨のすじにも間があって、
その間に存在している花あざみ、という描きかたに惹かれます。
ふだんなにげなく見ている光景を
あらためて言葉で描写して
定着させていく把握のちからを感じます。
祖母がすでにいなくなって、そののちさらに濃くなる故郷。
故郷に帰ることができる機会は限られているはずなのに
なお色濃く感じる不思議。
「花あざみ」というツンツンとしたフォルムと
鮮やかな色を持つ花の存在感で
「濃くなりしふるさと」に視覚的なイメージを与えています。