波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「間」

雨降れば雨の間に立つ花あざみ祖母の死後濃くなりしふるさと      *間=ま

                 吉川 宏志 『海雨』 

 

降っている雨のすじにも間があって、

その間に存在している花あざみ、という描きかたに惹かれます。

ふだんなにげなく見ている光景を

あらためて言葉で描写して

定着させていく把握のちからを感じます。

 

祖母がすでにいなくなって、そののちさらに濃くなる故郷。

故郷に帰ることができる機会は限られているはずなのに

なお色濃く感じる不思議。

「花あざみ」というツンツンとしたフォルムと

鮮やかな色を持つ花の存在感で

「濃くなりしふるさと」に視覚的なイメージを与えています。