波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「向日葵」

研究者になるまいなどと思ひゐしかのあつき日々黒き向日葵       

真中朋久『雨裂』「丹波太郎」P15 (砂子屋書房 現代短歌文庫)

向日葵を詠んだ歌の中で、とても印象的な一首。既存のイメージを逆転させたような、画像の白黒を反転させたような強さがあるのです。

 

「黒き向日葵」はもしかしたら、すでに枯れて種びっしりになった状態なのかもしれませんし、そういう色味の品種なのかもしれません。

 

それでも、明るいイメージではないところが妙に気になったのです。

 

「研究者になるまいなどと思ひゐし」という意思も、とても強い。そういう進路もあり得たのかもしれないけど、自分の意思で除外したのでしょう。

 

夏の暑い日々、強い日差し、黒い向日葵。「なるまい」という断言。

 

複数の強烈さが一首の中に存在していて、かつてあった夏のひとつとして、時折思い出す歌です。