波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「鳩」

手のなかに鳩をつつみてはなちやるたのしさ春夜投函にゆく

*春夜=しゆんや

小池純代「青煙抄」『雅族』P12

 

春の夜に近くのポストまで行って、手紙かハガキを投函するつもりらしい。

 

「手のなかに鳩をつつみてはなちやる」がやはり楽しい表現です。

 

投函するときの気持ちは、飼っている鳩をパッと放つ前のワクワク感にも似ているのでしょう。あとは手品で鳩を飛ばして、観客を驚かせるシーンとか。

 

手のなかに収めていた一羽の鳩を解放することで、鳩も勢いよく飛び立とうとする。

 

鳥が飛ぼうとするときのダイナミックな翼の動きをイメージして、それに続けて手紙の内容も楽しい内容なのかな、相手のことを考えると気持ちが弾むのかな、等読んでいてちょっと想像してしまう。

 

春の夜の、本当にちょっとしたお出かけの楽しみ。