波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「釦」

くるみ釦のいとこのやうなこでまりの釦ひとつに百のはなびら

 有川知津子「しゆわつ、ぼつ」『ボトルシップ』P59

春の花が美しい季節です。最近、散歩で花を見るのが楽しい。白い毬が連なったようなこでまりの花も、とても愛らしい花です。

 

くるみ釦は、芯を布で包んだ、まあるいかわいい釦です。確かに、こでまりに似ています。

 

こでまりの花は、小さな花がたっぷり集まって、毬状の花を形作っています。それを釦に見立てて、描写しています。兄弟姉妹ではなく「いとこ」くらいの距離感が、わかるな・・・って感じ。

 

有川さんの歌集には、豊かな自然が登場します。ちょっと異界っぽかったり、少し不思議な雰囲気だったりして、今までに見慣れた光景や草花に、まだまだ新しい表情があると思うのです。

 

散歩の途中に新しい草木に出会うような喜びがある、と言ってもいい。たった一冊のなかに知っている光景、未知の光景、いろんな自然が詰まっていそうです。