波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「たまご」

つぎつぎに光るたまごを産みながら春の真中の炭酸水は

梶原さい子「尾鰭」『ナラティブ』P98

 

春の穏やかな日に、炭酸水のボトルを眺めてみる。

(中味が見えているので、ボトルでしょう)

 

春なので、そこまで暑さが激しいイメージは無く、あくまで優しい雰囲気の中のボトル。

 

1本のボトルの中で次々と現れては消えていく炭酸の泡には、どこか繊細なイメージがあります。

 

炭酸水の中をしゅわしゅわ上がっていく細かい泡を「たまご」としたことで、ボトルの中がなんだか水辺の生き物の産卵シーンめいてきます。

 

次々と発生してのぼりだす泡の粒。改めて見てみると不思議な迫力。春、新緑などあらゆる生命がみなぎりだす季節の迫力です。