波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「泡」

死ぬほどというその死までそばにいて泡立草の泡のなかなる

 小島なお「両手をあげて、夏へ」短歌研究2021年8月号 P32

先月、みかづきも読書会で取り上げた連作の中から。

 

泡立草、なかなか目立つ黄色で、路上で見ると強い色だな~と思います。泡立草は確かに、泡立っているような形。その色といい、名前といい、面白い植物です。

 

「死ぬほどというその死までそばにいて」は他者への希求だと受け取りました。

 

死ぬほど悔しい、等に使われる「死ぬほど」。「死ぬほど」と言ってもあくまで程度の表現なので、実際は死ぬわけではありません。

 

しかし強烈な感情の強さを示すには、ピッタリかもしれません。

 

感情のギリギリの地点まで、私と一緒にいて欲しい。強い感情は、自分のなかでぐっと煮詰まる感じがします。

 

「泡立草の泡のなかなる」はちょっと迷いますが、「泡のなか」にぎゅっと凝縮されている感じ。

 

鮮やかな黄色の泡立草のモワッとした形の中で、強い感情が込められたままになっている…と考えました。