波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「観覧車」

少しずつ秋空削りて降りてくる巨大な観覧車のゴンドラは

三井修「地磁気」『海図』P40

 

たくさんのゴンドラを伴って観覧車が降りてくる様は、ダイナミック。

 

秋の空は透明感があって高く見えるし、その空中を回転しつつ観覧車が降りてくる様子を「秋空削りて」としたことで、奥行きや高さが見えるようです。

 

「削りて」が意外な動詞で、観覧車の動きによって傷をつけられる、と考えると空には無数の傷がありそうです。

 

「巨大な観覧車の/ゴンドラは」意味的には/の位置で切れるし、四句目が大きな字余りだと思いました。四句目に重量がある感じ。

 

秋の澄んだ空気感や、回転してくる観覧車のゆっくりした動きなど、見覚えのある光景をあらためて自分の中で再生しつつ、味わえる歌です。