塔という短歌結社に入ってすでに4年が過ぎました。節目(?)に振り返っておくのもいいだろう、と思い書いておきます。
塔に対する感想をざっくりとまとめると次のようになります。
- 結社の選者は優秀な方たちだけど、思いのほかフレンドリーで話しやすい
- びっくりするくらい上手い人たちがいる!!
- 尊敬している歌人とイベントや歌会で本当に会える!
- 上手い人とそうでない人の差は予想以上に大きい・・・
- 合わない人たちとは適当に距離を取るべし
- 自分の目標を決めて、そのために結社という場をいい意味で利用するといい
こんな感じです。
これから短歌結社に入ろうかな、でもいまいちよくわからないしな・・・という人には今回の記事は参考になるかもしれません。
結社入会前の情報収集について
短歌結社に入ったものの、わりとすぐにやめる人もいるそうです。
個人と組織は合う・合わないがあるので、入会して合わないと気づいてすぐにやめてしまうくらいなら、最初にできるだけの情報を集めて、複数の短歌結社を比較検討する方がいいと思っています。
私が塔入会前にやった情報収集は以下の通り。
1 見本誌を取り寄せて読みまくる
⇒作品の傾向や企画の内容だけでなく、文字の大きさ、紙面のレイアウトなど見やすさ、雰囲気などを比較する。
2 結社のなかのシステムを知る
⇒結社誌にのせる歌の採否を決める「選」のシステムはどうなっているのか、選者は毎回同じ方なのか、結社内に賞などがあるのか。
3 選者を務めている方の歌集をできるだけ読む
⇒「この作品を作っている方にならダメだしされて納得できそうか」具体的にイメージしてみる。尊敬できる歌人が見つかったら、なおいい。
4 短歌結社の公式サイトがあったらチェックしてみる
⇒そもそも興味のある結社がサイトを運営しているのか(←ここからかい・・・)、サイトデザインや情報が古すぎないか、更新頻度はどのくらいか、入会やイベントに関する必要な情報が見やすい位置に配置されているか
5 選者や短歌結社の会員個人のブログやSNSアカウントを探してチェック
⇒実はもっとも人となりが伺える場ではある。良くも悪くも。
6 すでに結社に入会している方に質問する
⇒実際に入会している人にとってのメリット・デメリットを聞いてみる。主にツイッターのDMなどで質問しました。生の声としてありがたかったです!
これに加えて、イベントや結社の歌会へのお試し参加をしてみたら、いいんじゃないでしょうか?
この段階でどうやっても雰囲気や考えが合わないな、と思ったら黙ってさっさと去りましょう。
むやみに関わって個人情報とか渡すと(場合によっては)面倒ですから。どちらか一方がいいとか悪いとかではなくて、合わないものは合わないんですよ。
ただし、短歌の世界はとても狭いです。結社を超えてさまざまな歌人たちが交流しています。
歌風や体制が合わないと思って避けた結社のメンバーとも、大きめのイベントなどで顔を合わせることは多いので、苦手な空気が漂いだしたらむやみに波風を立てずに、そっと去る方がスマートでしょう。
あと、会員にはいろんな人がいるので、当然ながら、合わない人や苦手な人もいます。
これまた、どこかで顔を合わせる機会が少なからずあるので、関わりあいすぎず、適度に距離を取っておくように心がけています。
短歌結社は趣味と研鑽の場。自分の目的に合わせて人間関係を作り上げられるのがいいところです。
ムキになってつらい人間関係を維持しようとせずに、詠む力と読む力を高めあえる、有意義な人間関係を築きたいものですね。
結社誌の選について
若葉集(塔で入会1年目に在籍する欄)のときは、毎月、何首の短歌が採用されているのか気にしていたのですが、最近はあんまり気にしていないです。
最初は一喜一憂するのも無理ないけど、中身を見る方がたぶん有益。
毎月、送った歌の一覧表を作っているので、詠草のなかで採用された歌を記録しています。
自分がいいな、と思っていた歌が落ちていたときは不思議なときもあるし、「あの程度では選者の選に残るのは無理か・・・」と納得して諦めることもあります。選者の好みもなんとなくうかがえて、選の結果って興味深いです。
もともと、短歌結社に入ったのは、「自分よりもずっと実力のある歌人の選を受けてみたい」と思ってのことなので、選の結果は大事にしたいと思っています。
最近は1回1回、ちょっと挑戦(?)した歌を混ぜるようにしています。落ちるかもしれないけど、意外と好評かもしれない歌を出しておいて、結果を待ちます。
自分の予想と、選の結果のギャップを楽しめるくらいになるといいんじゃないかな。
塔には実力のある歌人が大勢いるので、そして会員の人数が多いので、あんまりたいした評価はいただけないだろう、と入会当時は思っていました。
毎月の詠草に対しては、私が予想していたよりも高い評価をいただけて、嬉しいという気持ちがある一方で、連作をもうちょっと上手になりたいな、という気持ちをずっと引っ張っています。今後の課題ということで頑張ります・・・。
歌会について
歌会については最初のころ、あんまり興味なくて、入会して半年以上経過してから初めて参加したのを覚えています。
ツテもコネもない見知らぬ会員であった私の評を丁寧に話を聞いてくれる方もいれば、そうでないひともいて、いろいろな会員がいるのだな、と実感したものでした。
私は入会前に短歌の評をしあう歌会という場に行ったことはなかったし、別にいいけど、これから結社に入るかも、っていう人は数回、お試しで歌会に参加してから入会を決めるほうがいいかもしれないですね。
メンバーとか結社のなかの雰囲気が少し分かります。すでに学生短歌会などに所属しているかたは、ぜひ先輩や友達に頼んで、一緒に結社の歌会にも参加させてもらうといいでしょう。ひとりで行くより参加しやすいはずです。
いままでにいくつかの歌会に参加してみて感じたことは以下になります。
- 選者がいる歌会のほうが(特に初心者には)おすすめ
- 歌会は作品の良しあしの基準を磨く場と考える
【自分の作品への評に対して】
- とりあえず発言者の話が終わるまで聞く
- 納得のいかない批判もあるが、今後の検討課題にします
- とんちんかんな解釈がでても立腹しない
- 自分の歌が他人にどこまで伝わったのか、あるいは伝わらないのか把握する
- 自分の作品について自分で思っていたイメージと、他人がもったイメージの差を考える
【他人の作品への評をするとき】
- 他人の作品のどこがよくてどこがよくないのか、理由をつけてできるだけ言ってみる
- 解釈を間違えてしまっても気にしなくていい。あとで調べて知識を増やしましょう
- 人の批評を嗤っている人がいても、気にしない
歌会ならどこでもいいっていうわけにもいかないですよ。作品のレベルがまちまちのケースもあるし、作品の批評じゃなくて自分のことを延々と語りだす人とかいますから。
そうした雰囲気をなあなあで許容する場か、びしっと引き締める場かで、かなり変わります。参加するに値するか否か、場所は選びましょう。
やはり尊敬している選者がいる歌会をちゃんと選んでいったほうがいいですね。作品の良しあしを見抜くには、相当の修練が必要になります。
見巧者としての眼をもっている方のグループに混じって、感覚を知っていくという点が歌会のありがたい面ではないかな、と思います。
初心者は可能なら、できるだけ選者や、批評が上手い人がいる歌会のほうがいいですよ。最初に変なところに関わって、かえって下手になったり、歌会が嫌いになったりしたら、かわいそうだから。
最近、ある歌会で感心したことがあります。ある選者の方が、発言している人が変わるたびに発言者の顔を毎回、見ようとされていました。
ささやかな行動ですが、意外にできないかもしれません。選者の方ってもう数えきれないくらいの歌会、出ているのにね。話を聞こうとしている姿勢は、そういう仕草に出るんでしょう。
「知らない人たちの集まりに出て発言するのが、あんまり得意でない」っていう人がいたら、気持ちは分かりますよ。私もべつに得意ではないから。
ある程度経験をつんで、慣れるしかない面もあります。もしどうしてもしんどくなったら、ずっと参加せずに休み休みでもいいと思います。行ってみたいな、と素直に思える場所が見つかるといいですね。
自分にとってプラスになるように組織を活用するということ
私が塔という結社を選んだのは「尊敬している歌人が多く在籍しているから」という理由が最も大きいし、その判断で良かったと思っています。
いま、とてもありがたいのは、相談できる選者や先輩がいらっしゃること。
もちろん、相談相手なので、誰でもいいというわけでは無いけど。連作のこと、好きな作品のこと、評のこと。ひとりで歌を詠んでいたころとは違って、自分よりもっと上手い人たちと話ができる、というのはいい刺激になっています。
憧れていた歌人や選者にもけっこう悩みがあったり、苦しかった時期があったりするんだな、と知ると、何年も前に私が歌集で拝見した作品がより身近になる気もします。
できたらもっと作品の腕を上げて、尊敬している人達から、作品の質でちゃんと認めてもらえるようになりたい。
もちろん組織の中なので、心ない人から不快な発言を聞いたこともあるし、関わり合いたくない人もいます。私だって適当に距離を取りますよ、そんなもん。
特に塔は大きな組織なので、いろんな人がいて当然です。あんまりなんでもかんでも期待せずに、私にとっての「ちょっとでも作品の質を上げたい」という気持ちにマッチした部分を活用したいと思っています。
なにかしら学べることがあるなら、その組織とはよい関係を保っておきたい。続けたからといって短歌が上手くなるかどうかはわからない、とは知っていますが、もう少し粘ってみたい。
ツイッターについて
この記事のついでに書いておくと、私はツイッターはやっていますが、鍵つきアカウントです。
フォローリクエスト送っている方がたまにいますが、申し訳ないのですが、基本的に承認しません。
それをわかった上で一度試しに送ってみよう、というのはまだいいのですが、断られた後に複数回にわたってフォローリクエストを送ってくる方がいます。
何度フォローリクエストを送ってきても、結果が変わることはほぼないので、しつこく送る行為はおやめくださいませ。
まとめ
私が結社に入る前に、すでに結社に所属している知人・友人たちに、結社のことを質問していた時期があります。
「塔みたいに大きな結社でなくていいから、ひとりひとりへのフォローが手厚い場がいい」という理由で、小規模な結社に所属している、と言った人がいました。
・・・4年前よりも、いまのほうが彼女が言っていたことがよくわかるなぁ。
塔という場所を見ていて、予想とは違っていた点や期待外れでがっかりした点もあります。それはそれでいいんです。現実だから。
でも尊敬している歌人と短歌の話がじっくりできることがありがたい、とも感じています。どれだけ貴重なことか、時間がたつほど分かってくるんじゃないかな、と思っています。
塔にいることで得られるものも多いはずなので、気長にわたしのなかの短歌の感覚を磨いてみたい、そう思います。