園丁の鋏しずくして吊られおり水界にも別の庭もつごとく
鈴木加成太「Summertime」『うすがみの銀河』P14
『うすがみの銀河』は目に見えている世界とはまたもう少し別のところに他の世界がある、と思えるような歌が多い歌集です。
作者の美意識とか優れた感覚を楽しみつつ、何度も読んでいます。
すこし古風な感じのする語である「園丁」が、使い終わった鋏を吊るしておいたのでしょう。雫がぽたぽた垂れているさまから「水界にも別の庭もつごとく」の比喩で、さらに世界が広がります。
「鋏」という金属の冷たい質感や、鋭い刃先、したたる雫などを想像し、その先の「別の庭」がどんなところなのか。
目に見えている、私たちが知っている世界はごく狭くて、まだ他の世界があるかのような広がりがある。そんな想像をかきたててくれるあたり、とても惹かれます。