波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「犬」

日だまりを海としその身横たふる犬よ大陸のごとき呼吸よ

ヴィオラと根菜」『翅ある人の音楽』濱松哲朗 P154

暖かな日だまりと犬の組み合わせは、なんとも長閑。ひとつ前に

 

上向きの蛇口に口をすすぎつつ冬の日向の公園にゐる

ヴィオラと根菜」『翅ある人の音楽』濱松哲朗 P154

があるので、その公園でたまたま見かけた景色かな、と思います。

 

日だまりを海、犬の呼吸の様子を大陸に見立てています。きっとわりと大きな犬で、日だまりのなかでその体を横たえてリラックスして眠っているのでしょう。

 

犬のゆったりとした呼吸に伴い、お腹がふくらんでへこんで、の繰り返し。それだけの光景ですが、比喩の効果もあっておおらかな雰囲気が心地よい。