波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「庭」

蕁麻のやうに両手をひろげればわたしの庭のとほい明るさ   

*蕁麻=いらくさ    

濱松哲朗 「土のみづから」『翅ある人の音楽』P182

 

蕁麻には葉や茎に棘があって、触ると接触性の皮膚炎を起こすことがあるとのこと。

 

画像で検索してみたら、小さなシソの葉みたいな葉っぱが四方に向かって広がっていました。

 

蕁麻のように広げられる両手。そこから広がる「わたしの庭」のイメージ。

 

この一首だけでなく歌集全体に通じるのは、やはり痛々しい傷や長引く痛みのイメージ。

 

その一方で、庭に降り注ぐ陽の光なのか「とほい明るさ」も存在する。痛みを持ちつつ、同時に明るさも存在する。

 

植物は美しくて穏やかなものばかりではないし、棘や毒をもつ植物もある。庭とはそういう混沌とした場所だろう、と思うのです。

 

歌集全体を通して生活の、もっというと、生きていく苦しさが何度も詠まれています。

 

でも単に暗く重たい歌集かというとそうではなくて音楽や詩、言葉を使ってどうにかこうにか生きている軌跡そのものを読んでいると思うのです。