波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評「漣」

漣はむかし清音なりしとかささなみささなみ夕陽を洗ふ

   伊沢玲 『雲のすごろく』「ケトル」P73 

 

 

コスモス所属の伊沢玲さんの歌集から。

 

長い歴史のなかで、音が変わってしまった語もあります。「漣」はかつては清音で、「ささなみ」だったという。

 

ひらがなに開かれた「ささなみ」の音や表記は優しい雰囲気。さらに繰り返すことで、細やかな波を思わせます。

 

「夕陽を洗ふ」とあるので、海に沈みゆく夕陽を思い描きます。雄大な太陽と、いくつもの波。

 

一日の終わりに向かう時間に、優しいイメージを描いていて、疲れやわだかまりがほどけるようです。