感情の錆びゆく速度ねこじゃらしの頭に触れて留めておこう
小島なお「十円」 COCOON14号
何かに向かっていた感情が、だんだんと冷めて、過去になりつつある。そういうときの歌。
主体は感情を「錆びゆく」という。雨風にさらされて、金属に錆が付着していくように、感情が劣化していく。たぶん、どうにもできない変化なのでしょう。
その一方で、感情が変わらないように、留めておきたい心理もある。できることと言えば、「ねこじゃらしの頭に触れて」みることくらい。柔らかく垂れるねこじゃらしの頭は、なんとなく、ペットみたい。
感情という、自分の中にありながら、ままならないものを、慰めるような仕草と思います。現実へのささやかな抗いを、柔らかい仕草のなかに詠んでいて、哀切があります。