2015-09-04 一首評 「硝子」 一首評 息吹きて硝子を膨らませることのたとえば断念のごとき愛しさ *愛しさ=かなしさ 三井修 「風紋の島」 前後の歌から、北海道小樽を訪れたときの作品であることがわかります。小樽は美しい硝子細工が有名ですね。吹きガラスと言われる、熱い硝子に息を吹き込んで食器などを作る技法。 「息吹きて硝子を膨らませることの愛しさ」の間に「たとえば断念のごとき」という言葉を挟み込むことで一途さや思いというのはつねに断念ととなり合わせであるということが急に胸に迫ってくるのです。