三耳壺の三つぶの耳冷ゆ亡き人の声聞きゐるはいづれの耳か
*三耳壺=さんじこ
栗木京子『新しき過去』「チキンラーメン」P32
三耳壺は、細長いひも状の飾りが付いた壺。写真などで見ると、たしかに耳みたいな小さな飾りが三つ、ついています。
下の句では壺に付けられた三つの耳のうち、どれかが「亡き人の声」を聞いていると詠まれています。
「聞きゐる」の「ゐる」は動作継続の意味があるので、その声は今でも聞こえてくる声なのでしょう。
どの耳なのかは分からないけど、確かに聞こえているだろう、静かな声。壺についた飾りが、この世の人ではなくなった者の声をしっかり受けとめている、と思うと少し怖い。
二句目が字余りで「冷ゆ」の二音が目立つように思います。しんとした寒い空気、静寂のなかに置かれている三耳壺。
死者の声を聞いている耳という想像が、厳かにも思えます。