続きを読む感情の錆びゆく速度ねこじゃらしの頭に触れて留めておこう
小島なお「十円」 COCOON14号
一首評「赦す」
赦すこと難しければ今朝の秋ふかく帽子をかぶり出でゆく
大口玲子『ザベリオ』 「赦すこと難しければ」P138
今年最後の投稿になります。一首評には大口玲子さんの歌集『ザベリオ』から。
わりと長い時間をかけて『ザベリオ』を読んでいたのですが、なんだか硬質というか、やや難しい印象のある歌集でした。この一首もやや難解な一首。
自分の過ちを許すのか、他者の罪や間違いを許すのか。どちらにせよ「赦す」ということは、とても難しいこと。頭でわかっていても、気持ちがついていかないというべきか・・・。
ふかぶかと帽子をかぶるのは、わだかまりのある本心を隠すためかもしれません。「秋の朝」などではなく、「今朝の秋」というちょっとひねった表現にも惹かれます。
未熟さや幼稚さ、醜さ。いろんな感情を抱えながら、なお、自分が信じるものに忠実。
『ザベリオ』のなかには、毎日、息子と向き合い、信じていることのために動いている、そんなひとの姿がありました。
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今年も「波と手紙」を読んでくださって、ありがとうございました。来年は、歌集評(忙しかったら一首評)をもう少し増やしたいんですけどね。
これからもよろしくお願いします。よいお年をお迎えください。
松村正直 『紫のひと』
秋空に襞なすごとく雲は伸び思いは北のあなたへ向かう
*襞=ひだ P11
松村氏の短歌のなかでは、「此処にいない人」「ここではない場所」を慕って詠む歌に印象的なものが多い。
高い秋空に広々と広がる面状の雲。「襞なすごとく」は細やかなプリーツみたいな形状の雲の描写であると同時に、人間の内面の気持ちの襞と呼応します。
「紫のひと」は松村正直氏の第五歌集。
いままでとはちょっと違う印象の歌集になっています。
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