赦すこと難しければ今朝の秋ふかく帽子をかぶり出でゆく
大口玲子『ザベリオ』 「赦すこと難しければ」P138
今年最後の投稿になります。一首評には大口玲子さんの歌集『ザベリオ』から。
わりと長い時間をかけて『ザベリオ』を読んでいたのですが、なんだか硬質というか、やや難しい印象のある歌集でした。この一首もやや難解な一首。
自分の過ちを許すのか、他者の罪や間違いを許すのか。どちらにせよ「赦す」ということは、とても難しいこと。頭でわかっていても、気持ちがついていかないというべきか・・・。
ふかぶかと帽子をかぶるのは、わだかまりのある本心を隠すためかもしれません。「秋の朝」などではなく、「今朝の秋」というちょっとひねった表現にも惹かれます。
未熟さや幼稚さ、醜さ。いろんな感情を抱えながら、なお、自分が信じるものに忠実。
『ザベリオ』のなかには、毎日、息子と向き合い、信じていることのために動いている、そんなひとの姿がありました。
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今年も「波と手紙」を読んでくださって、ありがとうございました。来年は、歌集評(忙しかったら一首評)をもう少し増やしたいんですけどね。
これからもよろしくお願いします。よいお年をお迎えください。