波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

塔2018年1月号 4

川の面に刺さりて鮎を釣る影を橋にもたれて数えておりぬ 永久保 英敏 P120 鮎釣りのために来ている人たちの 「影」に注目して、しかもその数を数えているという歌です。 人そのものではなくて影への着目、 数を数えるという行為になんだかこだわりがあります…

塔2018年1月号 3

鏡台に食ってかかるごと顔寄せてわかくさの妻が紅ひいている 垣野 俊一郎 P72 とても面白い歌です。毎日のように見ている妻の仕草を いきいきと描いていて、迫力があります。 「わかくさの」は「妻」にかかる枕詞。 「鏡台に食ってかかるごと顔寄せて」とい…

塔2018年1月号 2

みんなみの島を空より撃つに似てタルトレットをフォークで壊す 朝井 さとる P28 上の句は北朝鮮によるミサイル発射をふまえて詠まれているが 下の句はささやかな日常のお茶の時間。 世の中でどれどほ驚異的な出来事や事件が起こっていても 一般の人間は、仕…

塔2018年1月号 1

「塔」の表紙は半年ごとに変わります。 今回もおしゃれで素敵。 今年もなんとか「塔」の歌をいろいろ紹介できるといいな。 曼珠沙華見なかったといえば嘘になるしかし曠野はずっと続いた *曠野=あれの 吉川 宏志 P6 「見なかったといえば嘘になる」という…

一首評 「あねもね」

抱かれず なにも抱かずねむりたり半島にあねもねの咲く夢 抱かれず=いだかれず 江戸 雪 『百合オイル』 ひとりで静かにねむる夜。 初句のあとにあえて一字空けていることで 断絶した感覚を感じます。 見ている夢の場所が 「半島」という大陸から飛び出すよう…

一首評 「間」

雨降れば雨の間に立つ花あざみ祖母の死後濃くなりしふるさと *間=ま 吉川 宏志 『海雨』 降っている雨のすじにも間があって、 その間に存在している花あざみ、という描きかたに惹かれます。 ふだんなにげなく見ている光景を あらためて言葉で描写して 定着…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 いぬ年なので、犬の歌をあれこれ考えてみました。 そのうちの一首をアップしてみます。 犬は昔、飼っていたけど もうすっかり時間が経ってしまって懐かしい記憶になってしまった。 私は今年…