波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評 「指」

この朝のかなしみをかたはらに置きて練り香水を指にとりたり 横山 未来子 『午後の蝶』 練り香水、というアイテムにとても惹かれて気になった一首です。 パッケージもすごくかわいいんですよね、練り香水。 なにか悲しいことがあって、まだ気持ちは引っ張ら…

一首評 「楕円」

湾というやさしい楕円朝あさにその長径をゆく小舟あり 松村 由利子 『耳ふたひら』 湾はたしかに優しい丸みをおびた景色です。とくに遠くから臨んだときに曲線の美しさがよくわかります。 この歌は湾と海をゆく小舟を詠んでいるだけですがひろびろとした海辺…

「塔」2016年2月号を読んでいて  その2

塔2月号には「短連作」という5首程度の短い連作についての特集が組まれています。これが大変に面白かった。ちょうど最近、連作について考える機会があったので、感想をすこし上げておきましょう。 * 私の短連作「雪とえんぴつ」も掲載していただきました。 …

「塔」2016年2月号を読んでいて

たまには自分が所属している結社誌を読んでいて気づいたことなど。メモですが。 塔2月号の「青蝉通信」に若山牧水が比叡山に登って山寺に滞在した時の話が載っている。寺にこもった牧水が貧しい老人と一緒に酒を飲んだ話や吉川氏が今年の正月に実際に比叡山…

一首評 「波」

冬の日のみぎはに立てば too late, It's too late とささやく波は 大辻 隆弘 「大辻隆弘集」 冬の海辺は寂しい場所です。 三句、四句にかけての「too late,It's too late」が音のリフレインのおかげもあってくり返し寄せてくる波のリズムをイメージさせてく…

一首評 「金属」

真っ白な鼻でわたしの金属にふれてくる四月の深海魚 笹井 宏之 「ひとさらい」 久しぶりに笹井さんの歌集を読み直す機会がありました。ページを開くと唯一無二の世界があります。 この歌のなかの「金属」という言葉に惹かれます。いろんなとらえ方があると思…

松村正直 『駅へ』

『駅へ』は、松村正直氏の第一歌集です。 だいぶ前の歌集で、今更読む機会があると思っていなかったので、今回きちんと読めてとても嬉しかった。 最近の松村さんの歌風を結社誌や短歌総合誌で知っているので、初期の歌風を見ていると不思議な気もします。(…