波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「指」

 この朝のかなしみをかたはらに置きて練り香水を指にとりたり
                                  横山 未来子 『午後の蝶』

 練り香水、というアイテムにとても惹かれて気になった一首です。

パッケージもすごくかわいいんですよね、練り香水。

なにか悲しいことがあって、まだ気持ちは引っ張られているけれど
それでも朝の身支度をしている様子でしょう。
練り香水がお守りみたいな意味をもちます。

指はさまざまなものと自己が触れ合う接点になる部分です。
気持ちよりもさきに現実に合わせていこうとする指の動きが
せわしない、けれど仕方ないと思う。

こんな風に日常をやり過ごしてきたことを
読んでいる人も自分のなかで再生するのでしょう。