波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一首評 「パン」

今し世にかなしみあるを夕さりの店先にパンかがやきてをり 横山 未来子「午後の蝶」 冬の夕方に買い物に出た時の光景。ふっくらした長いフランスパンやつややかなブリオッシュがぱっと浮かびました。 毎日存在している店先の光景ですがときどき、やけにきら…

一首評 「針」

美しさのことを言えって冬の日の輝く針を差し出している 堂園 昌彦 「やがて秋茄子へと到る」 唐突な要求で、きっと言われたひとは困ってしまうだろう。「言え」という命令形と「針」という物体の鋭さやその先端の光が相手に向けられています。とても鋭い気…

久しぶりに短編小説を読んでいた

最近は歌集を読む機会が増えた一方で小説を読む機会がなくなっていました。葉ね文庫さんに行った時にもらった読書系フリーペーパー「ソルボンヌ通信」はおすすめの本を紹介しているフリーペーパーです。その中から気になったものをピックアップして読んでみ…

千種創一 「砂丘律」

「中東短歌」という同人誌のなかの短歌のいくつかが、数年前にツイッターでよく流れてました。そのときに千種さんの名前を覚えたのです。 「中東短歌」をはじめ、これまでの作品をおさめた「砂丘律」、装丁のこだわりも話題になっていますね。 ペーパーバッ…

一首評 「ゆうやみ」

自転車が魚のように流れると町は不思議なゆうやみでした 松村 正直 「駅へ」 なんとなく物語の書き出しみたいな雰囲気をもっていますね。 自転車に乗っただれかがすっと近くを通りすぎた光景かなと思います。「魚のように流れる」という比喩で動きの滑らかさ…

新年のご挨拶

昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。 さて、今年もこのブログをこつこつ更新していきます。今回はこの1年のはじめにあたって詠んだ歌を一首、おいておきます。今年もいろんな作品や刺激を吸収しながら短歌を詠んでいきたいです。 波…