桜吹雪 つよい怒りを脱ぎ捨ててどの無知よりもつややかでいる
工藤玲音「ほそながい」『水中で口笛』
工藤玲音さんの第一歌集から。言葉のもつ弾力を感じる歌が印象に残りました。
この歌なら、下句の「どの無知よりもつややかでいる」。
「無知」は本来、悪い意味で使われることが多い言葉ですが、この歌のなかでは開き直って肯定的。しかも「つややか」であることで、美質のような存在感。
上句では「つよい怒りを脱ぎ捨てて」とあるので、感情が大きく揺れた結果として開き直り、いっそ無知であることも肯定してしまうしたたかさを感じます。
一首のなかで初句切れの「桜吹雪」、「脱ぎ捨てて」「無知」などけっこう強めの言葉が配置されている点は私は気になるのですが、それでもなおこの歌には惹かれました。
一首のなかに発想の面白さや勢いがあって、全体として楽しい一冊です。