知りたいと思わなければ過ぎてゆく 林檎の芯のようなこの冬
小島なお「心の領地」『展開図』P109
冬にかかる、林檎の芯の比喩は奇妙な感じ。林檎の「芯」なので、周りを削り取られた残骸みたいなイメージが浮かびます。
でも、心もとない状態を感じ取り、何かを「知りたい」という欲求が中身を豊かにする予感があって、冬の中にいる不安と同時に、知らないものへの視線や希求もあるんじゃないか、と思います。
知らなければ遠いまま過ぐ林檎の芯のようにひとりが好きで 一月
こちらがもともとの歌。だいぶ変わってますよね。こちらでは、「林檎の芯のようにひとりが好きで」と続くので、自分の中の孤独を肯定的に捉えているように思います。
真冬にぽつん、と取り残されたような林檎の芯。
孤独を受容しつつも、過ぎ去っていく時間への愛惜を感じてしまう一首です。