波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評 「危機」

うすいグラスにいつも危機はありいまは逢ふ前の君に救はれてゐる

  林和清 「みちのくの黒い墓石」『去年マリエンバートで 

 

ブログを書く気がなくなってしまって、1ヵ月くらいほったらかしにしていました。

気が向いたときに、ときどき記事を更新してみます。

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久しぶりの一首評は、最近、読んでいた歌集「去年マリエンバートで」から。

全体として死とか危うさの気配が強い歌集でした。

 

うっかりすると割れてしまいそうな、うすいグラス。

きれいだけど、とても脆いものの象徴のようです。

 

「いつも危機はあり」で、「いつも」という以上は、前から、そしてこれからも「危機」が存在しているのはもう、決まっている。

 

過去から未来への時間のなかで、作中主体が感じ取っているのは「いま」の時間のこと。

 

「逢ふ前の君に救はれてゐる」とは奇妙な感じですが、実際に会う前のイメージみたいな部分によって、どこか自己の精神が救われている、ということかもしれません。

 

実際の時間の流れとはべつに、作中主体のなかにある過去の時間の流れ・イメージを感じて、二重の時間の感覚にすこし混乱してしまうのです。

 

それは悪いことではなくて、現実の時間の流れとはべつに精神のなかに、過去やイメージを持っていることはよくあること。

 

作中主体の中と外に流れる時間の差を取り込んでいて、一首のなかに時間の厚みや重なりを生み出しています。

8月のメモ

先日、はじめて塔の全国大会へ行ってきました。

最初はあんまり参加するつもりがなかったのですが、会ってみたい会員さんが何人か参加なさるということだったので、悩んだ末に参加しました。

もともと、大人数の場所が好きでもないので、あんまり期待せずに行ってみました。

会場についたら、知っている会員の方が声をかけてくださって、嬉しかったです。時間の都合でひとりひとりとじっくり話せるわけではないのですが、簡単でも挨拶できてよかったです。

前から会ってみたいと思っていた会員さんたちに会えたので、行ってみた意味はあった、と思っています。

全国大会の企画、運営にかかわったスタッフの方々、ありがとうございました。

 

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さて、このブログでは、毎月の塔に掲載された歌のなかから印象的な作品を選んで、さらに批評を加えてきました。

今月、いろいろ余裕がないので、ひとまずお休みにします。(先月くらいですでにすこし疲れていたのですが・・・)塔8月号への批評を見たくて来てくれた方がいたら、ごめんなさいね。

塔の選や批評は、1ヵ月か、数ヶ月休んだらまた気が向いたタイミングで再開するつもりです。そのときは、またよろしくお願いいたします。(他の記事でブログを更新することはあります)